「クリエイターつらいあるある」の予防を考える週間

Author :

nangking

そんなにちゃちゃっと描けるならと言って値切ってくるクライアントの童話とか、チキンの骨で作られた精巧な怪獣を大手テレビ局が買い叩いた驚きの金額とか。「デザイナーの/クリエイターのつらいあるある」が最近頻繁にタイムラインに浮かんできますが、そのたびに、なんかいつも似たようなことを思います。

「私たちは、こんなにひどい扱いを受けている種族なのですよ」とネットを使っておもしろおかしく表明することが、かえってそういう扱いを招いているんじゃないかな、と。

同業者同士で愚痴を言い合って、傷を舐めあって終わることほどつまらないことはありません。ならば、こういうお客様もどきたちを寄せつけないために、クリエイター自身は何ができるか?という話を書いておこうと思いました。

私も昔はなかなかひどかったですが

私はイラストの受注制作を生業としてやっていますが、いま、変なお客様に遭遇することはほぼありません。でも初めからそうだったわけではなくて、それは自分でチューニングした結果だと思っています。

ひと昔前、私がイラストレーターを名乗り始めた頃のお話。自作の稚拙なウェブサイトに絵を載せていた私の元には、こんな残念な話ばっかりが舞い込むのでした。

  • 「1万円あげるから明日の朝までに絵を描いてくれ(現在午前1時、要望不明)」
  • 「飲食店ですが、メニューブックに絵を使いたいので30個ばかり描いてください(ただしギャラは払えませんが)」
  • 「かわいい絵ですね!勝手に自分のブログのデザインに使わせてもらいました!」

いらだつ私。その様子を見ていた妹が
「最初はそういうくだらない依頼を積み重ねるもんなんでしょ?話が来るだけありがたいと思って我慢しろや」
とわかったようなことを言いました(ひでえ妹だ)。しかしいま思うと、ずいぶん象徴的なセリフです。世間はクリエイターとはそういうもんだと決めつけてくるし、それだけならまだしも、ときにはクリエイター自身がそう思い込んでいることさえある。

ともかく、お客様もどきに苦しめられる残念な状態を脱して、まともなお客様だけに囲まれること、その状態を自分で作ることは可能だ、と実体験をもって言いたいわけです。

「伝え方」をちゃんと考えました

それで私がその後どうしたかというと、自分のウェブサイトをいちから作り直しました。時期を前後してネットショップの仕事に関わったこともあり、ショッピングサイトの作り方からはいろんなことを学びました。

ちょっと極論めいてるけど、自分のプロモーション用ウェブサイトとポートフォリオ(作品集、業務案内書)をきっちり身を入れて作っておくだけでも、お客様もどきの予防になるという実感があります。身を入れる方向性は、間違ってはなりませんけれども。

単に「こんな絵描きました!見て見て!」というスタンスの見せ方だと、「あぁこの人は絵の好きな人なんだな。」とか「すてきな趣味だな。」などなど、各人が思っている「イラストレーターってこんなイメージ」で勝手に受け止められます。つまりはそれが素人扱いの発現なわけです。

「絵を(作品を)見てもらえればわかる」というのは、ダメ。言葉で伝えないと無意味です。見方を世間一般に委ねるから「商売でやってる人とは思わなかった、素人だと思ったから安くでいいと思った」というようなことが発生するんです。日本人はだいたい、クリエイターとは金をやらなくても働くもの、と思っていますから。

生業としてやるのだったら、最低でも、私はこういうスタンスで商売をやっているプロなんですよ、ってちゃんと表明する必要がある。でないと、世間の人はわかってくれません。

だから情報をコントロールします。具体的に、私には何ができて、誰をお客様としていて、値段はいくらくらいでやっています、と伝える。ときには、あなたが思っているクリエイターのイメージってじつは大間違いですよ、なんてことを表明する必要もあるかもしれない。

で、十分伝えたと思っていても、それでもまだ少しくらいは的外れなお客様がやってきます。人間というのはそれくらい伝わらないものです。だから手を抜けません。自分のプロモーション方法と向き合うことは、結局自分自身と向き合うことにもなるもので。

あんまり具体的なことは企業秘密なので、ざっくりした書き方になってしまったけど、そのうちちゃんとまとめたいな……。ともかく、プロモ用ウェブサイトを作り直すたびに、ポートフォリオをブラッシュアップするたびに、誇れる仕事は増え、お客様もどきは消えていった、というのが私のこの10年でした。地味ですが。

「いい作品さえつくれば……!」は危険すぎる

あと、場の話。「すごくいい作品を作っていれば、自動的に誰かの目にとまって勝手に有名になれる!」という夢はSNSのおかげで叶いやすくなったとはされているけれど、そこに賭けるのは足元を見られる要因のひとつだと思っているので、私はクリエイター用SNSはやらないし、Twitterも限定的にしか使いません。ひと昔前ならギャラリーで個展とか、路上で販売とかでしたでしょうか。とにかく、いい作品を作れば自動的に周囲に認められ、ギャラもちゃんと支払われると思うのは、かの恐ろしい思考停止というやつでは……キャー!!オバケーーー!!

たしかにあの作品を1万円でなんてさすがに悪意を感じるけど、受けたほうだって、こういう理不尽は仕事の場で冷静に解決する種類のものなんじゃないかなぁ。炎上へもっていくから、ほうら見ろ、やっぱり素人の類じゃないかと見えるのかもしれない。

世間はクリエイターの使い方なんて分かっていません。何らかの制作に携わる人たちでさえ、必ずしも完璧ではありません。ときにはこっちから啓蒙していくくらいの勢いでいいと思います。あんまりひどい扱いを受けたら「原価いくらかかると思ってんすか」って鼻で笑っちゃえばいいんだよ。

個人的には、商売のしかたの話こそを同業者と語り合ってみたいと思うんだけど、ま、なかなか乗ってもらえたことがないですね。作るのが好き系な人はだいたいがこういう話は苦手なのか、私のほうが変わってるのかなあ。

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